中小物流企業のM&A(1)

1990年に貨物自動車運送事業法が改正され、供給調整が廃止され、トラック輸送事業が免許制から許可制に変わりました。運賃も認可運賃が標準運賃に変わりました。

その効果は劇的で、2003年までにトラック輸送事業者数は4万社から6万社と1.5倍に増加しました。現状も6万2千社ほどの企業が存在します。ただし従業員数は110万人で変化ありません。

一方で廃業者数数も大幅に増加しています。新規参入と廃業による市場退出車の増加で、経済学的には効率性が得られているように一見見受けられますが、トンキロ当たり営業収入は0.8倍と低下するなど収益性が低下する一方、事故率が増加するなど負の影響も大きな課題となっ
ています。

2010年と比較すると営業収入が1兆7,840億円減少する一方で、事業者数は335社増加し、競争が激化しています。中小企業比率はトラック輸送業、倉庫業で90%を超えている現状です。

ヤマト運輸など大手トランク事業者の動向をみてもわかりますが、現状の人手不足の状況の下では、過酷な労働条件がつたられるトラック運送業の働き手確保も困難な状況です。団塊ジュニアの世代は物流事業等のいわゆる3K業界を避ける傾向があるというのも物流業界の人手不足を助長していると考えられます。

なぜ物流業でこれだけ員人不足が顕著なのか。こうした状況を招く原因は、物流業界全
体が中小企業の多い過当競争の業界であり、収益性が低く、労働時間も長い上に低賃金の厳しい労働条件におかれていることがあります。

全産業との比較でも実労働時間、超過勤務が多い一方で、賃金・賞与は低く抑えられており、人材不足となる大きな要因であると考えられています。

産業別に見ても40歳の推計値で、51分類中、倉庫業45位、道路貨物運送業49位です。46以下の順位でいえば46位廃棄物処理業、47位洗濯・利用・美容、48位社会福祉・介護事業、50位労働者派遣業、51位道路旅客運送業です。

大手物流企業のM&Aによる企業再編がようやく日本でも活発化してきておりますが、今後、こうした厳しい事業環境下で、中小物流企業、特にトラック事業者は、事業継続や事業拡大など生き残りのためのM&Aが活発化するといわれています。




マースクの経営戦略転換

マースクが選択と集中による組織再編を加速しています。AP Moller-Maersk 米国
プラスチック製造子会社をMBOで売却し、食品小売子会社売却を英国企業に売却し
ました。

背景には、2009年度の世界的不況によるコンテナ事業の不採算性と多角化経営によ
る拡大戦略の見直しがあります。定期コンテナ事業重視から石油、コンテナターミ
ナル事業重視に戦略を転換しました。会計上もコンテナ輸送とターミナルを含む関
連業務を別セグメント化しています。

ちなみにコンテナターミナルの重視は日系ではNYKも同様の方針です。

2010年度、第一四半期業績は原油価格の上昇、海上運賃の上昇で20%の増収となり
ました。純利益639百万ドルで、昨年の?373百万ドルから大幅改善です。

一方でコスト削減にも取り組んでいます。グループ企業の売却はコスト削減と選択
と集中戦略の一貫です。

貨物量は2010年度5%増加の見込みです。2009年度は150万FEUの輸送量でしたが、
2010年度上半期は180万FEUの輸送量でした。特にEUアジア間は18%増加する一方、
アジア域内では70%増加と大幅増でした。

輸送量の回復に伴い、海上運賃も平均2863ドル/FEUと2009年度比で18%増加です。
特にEUアジア間で16%増加しました。太平洋航路も5月以降運賃増加見込みです。

コンテナ輸送関連業務の純利益161百万ドルです。

DaMcoは、海上23%、エアー43%、SCM7%の増加です。

APMターミナルは取扱高が8%増加しました。。オークランドターミナルの稼働開
始が大きく寄与しています。塩田国際コンテナターミナルの株式をコスコ系企業か
ら買収することで、中国事業を拡張しました。

マースク、サーフマリンが20%増加した一方、それ以外の船社が39%の大幅増加で
す。Ebitda 115百万ドル(2009年度60百万ドル)です。


2月のニュースから ―郵船ロジスティクスの組織再編戦略 

2010年に日系ロジスティクス企業の組織再編が続いています。景気低迷をようやく
抜け出しけつつあり、リストラから一転拡大戦略に転換しつつあるのでしょう。

その中でも郵船航空(YAS)とNYKロジスティクス(NYKL)を経営統合による郵船ロ
ジスティクスの誕生は、2000年代に欧米で続いたロジスティクス業界の一大再編の
連鎖がまだ続いていることを実感させます。日本初のグローバルフォワーダーの誕
生に期待したいと思います。

経営目標にグローバルロジスティクスでトップ5を目指すとし、長期目標に売上高
1兆円を掲げています。DHL、K+Nなどを競合としての戦略です。

下記にありますが、事業と地域ポートフォリオをみる限り、ロジスティクス企業と
しては日系No.1だと思われます。日系メーカーを相手に営業開拓するのでしょうか
ら、海外市場での日系ロジスティクス事業者間の競争激化は避けられません。一般
的には経営規模、ネットワークのある企業が有利ですから、郵船ロジスティクスは
大きく成長する可能性があると思います。

■概要
•NYKロジスティクスジャパンを現金による吸収分割または事業譲渡により、郵
船航空サービスに統合
•郵船航空サービスを存続会社とし、東証1部上場は維持
•海外は日本郵船の物流事業と郵船航空サービスを統合。統合は統合新会社のJV方
式を基本とし、2011年4月?2012年3月を目途に順次統合
•海外の統合は対等。新統合会社の連結子会社とする。


■事業戦略
フレートフォワーディング(航空・海上)とコントラクトロジスティクスを事業の
両輪
個別サービスで世界トップレベルの競争力を持つ
個別サービスを利用する顧客へプラス1のサービス提供を目指す
総合ソリューションの提供

■営業戦略
現場主義の徹底により、効率的で高品質サービスの実現
顧客の立場にたち、End to Enc の輸送を肌理細かく責任を持って完遂する
産業別、地域別の特性に基づいた市場アプローチを行う
個別サービスのノウハウとInformation Technology/Logistics Technologyを組み
合わせ、最適物流商品を開発する
顧客のグローバル物流最適化要請に応え、テーラーメードのソリューションを提供する

■事業セグメント
海上輸送、航空輸送、コントラクトロジスティクス、陸上輸送
地域セグメント
日本、東アジア、南アジア・オセアニア、ヨーロッパ、アメリカ

■目標値
郵船ロジスティクス
     2008 2009 2013
連結売上    4,481 3,400 5,000
連結経常   52 17 180

従業員
国内 1,800
海外 13,200
世界 15,000
 
拠点数 倉庫面積(m2)
日本 73 73,028
東アジア79 247,661
米州 68 421,712
欧州 110 963,976
南アジアオセアニア
101 633,399
合計 431 2,339,776

2008年度の業績ですが、
               
     日本郵船本体の物流事業    YAS 
売上         5,269 1,674  
経常利益      171 535 億円

ですので、単純合計ではないようです。統合されない事業や地域などもあるのでし
ょうか。詳しい情報はこれから明らかにされると思います。
引き続き経過を見てゆきたいと思います。


コラム 2010年1月のニュースから ― 組織再編の動向

1月だけでも組織再編について下記の記事を掲載しました。事業強化や営業地域拡
大のための組織再編と、コスト削減を意図したリストラやアウトソースなどの組織
再編に分類しました。

1強化
1)事業と地域の強化
DB Schneker Rail 伊NordCargo株式過半数取得
2)関連事業と地域事業の強化
KL 米国物流会社へ資本参加

2リストラ、アウトソーシング
1)選択と集中の推進
TNT チェコのコールセンター業務売却
TNT ドイツ子会社売却
2)アウトソース
ドイツポスト ITアウトソース推進

注目点は、TNTの非中核事業を売却することで選択と集中をすすめる戦略を強化し
ている点です。09年度は世界金融危機の影響でエキスプレス業界は軒並み減収演繹
ですので、業績悪化が要因となっているとは思います。

それでも06年以降進めるメールとエキスプレス事業からなるネットワーク事業への
集中戦略は見事です。ただ09年度のような市場の崩壊局面では、事業ポートフォリ
オの狭さがリスクとなることも明らかになりました。

ドイツポストのITノアウトソーシング推進も多少驚きでした。前例としてはマース
クがマースクデータをIBMへ売却したことがありました。メールサーバーの自社所
有をやめてGoogleのサービスを利用する例もありますが、高度化するITをすべて自
社管理するには経営資源面で制約が多くなりすぎているのだと思います。

クラウドコンピューティングの進展とともにロジスティクス業界でもトレンドとな
ると思われます。 


コントラクト・ロジスティクスの成長

K+NやCevaがコントラクトロジスティクス分野で売上を拡大しています。ドイツ
ポストやK+Nは、事業セグメントのひとつにコントラクトロジスティクスがあり
ます。ドイツポストは、グローバルプレート、サプライチェーンと同じ分野として
います。

2008年度までのK+Nについていえば、コントラクトロジスティクス業務を強化し
ていることが、好業績の大きな要因でした。2008年度だけでもサムスンやエアバス
など数多くのコントラクトロジスティクス業務の契約を獲得しております。05年か
ら08年にかけてコントラクトロジスティクスセグメントは売上高を約255%成長さ
せて、08年度4,732百万ユーロ(6151億円。130円換算)の規模をもちます。

コントラクトロジスティクスの定義ですが、期間、料金、サービス範囲などを明記
した契約に基づいて行うロジスティクスサービスです。倉庫と配送業務が絡むロジ
スティクス業務が該当する場合が多いと思いますので、実質的には日本でも多くの
ロジスティクス事業者が同分野でサービスを提供しております。ただ正式な契約書
を締結して、いるかどうかが大きなポイントです。

参考までにに契約書については国土交通省から3PL契約書ガイドラインが公表さ
れておりますので参照してください。

荷主の経営資源のコア業務への集中化、コスト削減を目的としたロジスティクス業
務のアウトソーシング化が背景としてあるものと思います。コントラクトロジステ
ィクス業務をグローバルに延ばすためには、ITの整備、幅広いワンストップサー
ビス、グローバルなサービス体制などが求められるといわれます。K+Nについて
は、事業強化のための欧州を中心とした組織再編を積極的に行いながら事業拡大を
図りました。


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