ロジスティクスのマーケティング (1) 延期・投機の原理

▼延期・投機の原理とロジスティクス戦略

マーケティングの販売戦略とロジスティクスの関係は、配送センターや輸送
方法の選定などロジスティクス戦略そのものです。ロジスティクスや物流が
マーケティングのなかで語られる唯一の箇所でもあります。

これは当たり前のことなのですが、こうした知識をもってロジスティクス
企業にとっての顧客がどの戦略で販売戦略を行っているのかを考えることは、
顧客サービス向上の点から重要です。

重要な論点である延期・投機の原理を考えます。

▼延期の原理
実需が把握されるまでできるだけ製品の生産を引き延ばし、実需があるたび
にこまめに店舗への納品を行う販売戦略です。消費者ニーズに適合した生産
流通体制を確立する必要があります。小売業にとってはメリットが多くなり
ます。現在のSCM理論、ロジスティクス理論が目指している形態です。

▼投機の原理
実需の把握をまたず、需要予測などに基づく計画的生産によってできるだけ
早く製品を生産し、できるだけ早くまとめて店舗へ納品する販売戦略です。
メーカーは大きな規模の経済性を得るという理屈です。
現在では延期の原理を求められていますが、現実には投機の原理は今でも
さかんに行われていると思われます。

生産と流通について論点がありますが、流通についてだけ、触れたいと思います。
マトリックス化にすると下記のようになります。

   延期   投機
時間 短サイクル(1) 長サイクル(2)
空間 分散在庫(3)   集中在庫(4)

(時間=納品リードタイム  空間=店頭在庫)

▼時間軸でみた販売戦略
(1)延期
(特徴)発注を購買時点近くまで引き伸ばす。短い納品リードタイム
(メリット)小売の配送時間の短縮。小売店頭在庫期間の短縮。
(デメリット)メーカーの小ロット配送による配送費用増加。

(2)投機
(特徴)発注を前倒すため納品リードタイムが長くなる。
(メリット)メーカー側の大ロット配送による配送費用削減。
(デメリット)小売店での配送時間の長期化。小売店頭在庫期間の長期化。

▼空間軸でみた販売戦略
(3)延期
(特徴)在庫位置を消費者の購買地点の店舗に近づける分散在庫
(メリット)小売の店頭在庫の削減
(デメリット)メーカー在庫水準は拠点が増えるため上昇。各種在庫費用も増大。

(4)投機の場合
(目的)店舗からの遠い場所に地理的に集中させる集中在庫
(メリット)メーカー在庫水準は拠点が減るため減少。各種在庫費用も減少。
(デメリット)小売の店頭在庫の増加

従来、メーカーは投機の原理(リスク負担は小売)、小売は延期の
原理(リスク負担はメーカー)で販売戦略をたてていました。
現在は延期の原理での対応がメーカーでも求められています。

現在、大型の配送センターを構えて、在庫を集中化することで
在庫管理費用を削減する動きが盛んです。これは、投機の理論に
基づいて行われているようにも思われますが、実際には、延期の原理と
投機の原理をハイブリッドさせて、(1)と(4)を組み合わせたようなものを
目指していると思われます。

経営学の理論は後付けですので、これから修正された新しい理論
が生まれるのでしょうか。期待したいと思います。


(この記事はロジスティクス・ジャパン 07年5月3日に掲載された記事です)


ロジスティクスのマーケティング(3) - ロジスティクスとサービスマーケティング(2)

サービスマーケティング(2)

▼競争戦略
まとめ方を変えるだけですが、サービスの特性からみた競争戦略の手法について考えて
みたいと思います。

▼1コスト優位
1-1 マニュアル化
品質の変動性の点からですが、結果的にはコスト削減につながります。社員教育、プロ
セスの品質維持を目指します。それに基づいて継続的に見直し、プロセス改善、コスト
削減を図ります。

マニュアル化には現場を反映させるだけではなく、目標とする品質を達成するための改
善の視点も取り入れ、さらに都度見直しをかけることがポイントです。

1-2 システム化
ここも品質の変動性の観点から言えます。
械化、情報システム化によるサービス品質向維持を図のが目的ですが、合理化、コスト
優位にも直結します。ただ投資が小さくないのが難点です。また投資効果の測定も難し
い点も課題です。

1-3 共同化
需要の変動性への対応に関係しますが、需要変動に伴う稼働率の向上をはかるうえで、
共同運行は非常に効果があります。 外航海運では昔から盛んでした。航空業界でもとり
入れられています。日本国内のトラック業界でも動きが盛んです。

▼2 差別化優位
2-1 ブランド化
無形性への対応で非常に大きい意義を持ちます。
サービスは利用するまでその価値を実際には認識できません。イメージなどでサービス
を訴求する必要があります。その際にサービスを一言で認識できるブランドがあれば、
非常に有利です。

宅配といえばヤマト、クーリエといえばDHL、FEDEXというような確立されたブランド力
があれば別ですが、なかなか簡単にはゆきません。自社の強みをよく見極めたうえで、
経営資源を集中して強みを強化するとともに、外部に向かって積極的に宣伝する必要が
あります。その際に独自ブランド名を冠して、繰り返し強調するべきでしょう。

今後、ロジスティクス企業が生き残るにはメーカー同様にブランド戦略は非常に大きい
意義を持つと思われます。社員の士気向上にもつながります。

2-2 品質管理
1)標準化
パレットの標準化とそれに合わせた製品包装、梱包などで標準化がかなり進んだと思い
ますが、まだ改善の余地が残されていると思います。特に環境への配慮からリターナブ
ル容器や回収、再利用などでは課題が多いと思います。

2)KPI
コスト削減率、配送時間達成率、誤出荷率、無事故率などさまざまな物流管理上の数値
を指標化し、それを顧客にコミットすることで、業務獲得を行うロジスティクス業者も
増えているようです。

指標化にあたり、測定、その評価が非常に困難ですが、それが可能なだけのシステムを
導入しているのでしょう。さらなるロジスティクス企業の目標は、ゲインシェアリング
ですが、そこはなかなか難しいのではないでしょうか。

3)情報化
可視化、リアルタイム化などの要請でコストはかかりますが、競争優位を築く上では欠
かせない点です。ソフトの種類も機能も価格も様々です。導入後のサポート体制なども
重要です。選択には非常に大きな決断が入ります。

2-3 差別型価格政策による差別化
実現はなかなか難しいと思いますが、 需要の平準化に取り組むためにも、閑散期の割
引、繁忙期の割増などを検討したいところです。また、燃料高騰時の燃料割増などの導
入も検討されるべきだろうと思います。

顧客を説得できるだけの実績値やコストレポートなどさまざまな数値データを準備し
て、粘り強く交渉する必要があります。顧客との契約上の取り決めも非常に重要になる
と思います。

(この記事はロジスティクス・ジャパン 07年10月20日掲載記事です)


ロジスティクスのマーケティング(2) - ロジスティクスとサービスマーケティング(1)

■サービスの特性とロジスティクス
サービスの特性には、無形性、品質の変動性、不可分性、消滅性、需要の変動性があります。

▼サービスの無形性 
実際にサービスを受けないと内容や質を評価できません。宣伝だけみてもではサービス
の内容を実感することはできません。例えば、航空会社がパイロットの優秀性や親切な
スチュワーデスを広告で訴求するのは、この無形性のためです。

ロジスティクス企業はサービスを訴求するために、ロジスティクスシステムを支える人
材やハードを強調することがあります。DHLがグローバル性を、Fedexがチームワークの
良さを訴求するも同じ要因からです。

▼品質の変動性 
提供する人間でサービスの品質は変わります。ロジスティクスは人の関与が少ないよう
にも感じられますが、現実には多くの人的作業が関与するサービスです。

対応策としては、個人によるサービスレベル差をなくすことや、人的関与を減らすこと
が考えられます。例えば、ホテルなどでのサービスの研修を行ってサービス品質を保つ
ことや、宅配便が機械化で品質維持につとめることなどがあげられます。

▼不可分性 
サービスは生産(供給)と消費(需要)が同時です。これをサービスの不可分性といい
ます。ホテルなどをイメージしてもらえればよいですが、消費者がサービスを受ける時
には、サービスの供給と需要が同時に行われております。

その結果、サービスの提供者と受け手の顧客の相互関係が重視されます。場所などの雰
囲気、提供者の身だしなみなどが重要な要素となるのです。

ロジスティクスでは、この点はあまり重視されないかもしれませんが、サービスの特性
として認識する必要はあります。運転手の身だしなみや受付の雰囲気への配慮も重要な
マーケティング要素なのです。

▼消滅性   
当然ですがサービスは在庫できません。トラック、飛行機、船なんでもそうですが、貨
物輸送というサービスを行う際に、貨物がなければ空で運行しなければなりません。
モノのようにとっておくことが出来ません。

そのため共同配送、共同運行などにより実車率、乗客率などを向上させることが求めら
れます。

▼需要の変動性 
シーズンにより需要変動が大きくなるのもサービスの特性です。そのため稼働率や収益
に大きな変動が生じてしまいます。需要と供給の管理が課題となるのです。
 
需要管理には、非ピーク時の価格の引き下げ、非ピーク時の需要活性化(朝食メニュ
ー、平日ゴルフパックなど)があります。レストランのラウンジのような補完サービス
も考えられます。

供給管理のもっとも簡単な例にはセルフサービスがあります。パートの活用による需要
変動の緩和も一つです。非ピーク時に清掃などを行うことで、人員の効率を高めること
も一手段です。


(これはロジスティクス・ジャパン 07年6月3日掲載記事です。)


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