大手物流企業の環境経営(1) ドイツポストDHL(DPDHL)

(1) 経営概要
2012年度売上規模7.9兆円(換算レート142.321円/EUR)、EBIT(支払金利前税引前利益)3,793億円。全世界従業員数43万人、航空機保有数168機。世界一のロジスティクス企業である。
DPDHLは1990年の民営化以降、果敢なM&Aとリストラを繰り返して業績を拡大してきた。そのスピード感と迫力は圧倒的である。サプライチェーン事業においては2000年にスイスのダンザス、2006年に英国のエクセルを買収して基盤を固めた。エクスプレス事業では2002年にDHLを傘下に収めた。現在ではエクスプレス事業とサプライチェーン事業のサービスブランドを「DHL」に統合して総合的なロジスティクスサービスを全世界で展開している。2008年度は米航空貨物会社のポーラーエアカーゴ・ワールドワイドの株式の49%を取得する一方で、エクスプレス部門では米国内の業務から撤退するという大規模なリストラを行った。また同年度、ドイツ国内ではポストバンクをドイツ銀行に売却、コアである総合ロジスティクス事業に集中する戦略をとっている。
2012年度のセグメント別売上高はメール事業24.6%、エクスプレス事業22.5%、グローバルフォワーディング・フレート部門27.6%、サプライチェーン25.3%と分散化されている。地域別売上高もEU・中東・アフリカ62%、アメリカ27%、アジア・太平洋11%である。事業セグメント別EBITはメール事業34%、エクスプレス事業35.9%、グローバルフォワーディング・フレート部門16.6%、サプライチェーン13.5%である。

(2)環境経営
新しい温室効果ガス排出量測定方法の標準化や排出量削減管理の普及に積極的に協力している。世界資源研究所と世界環境経済人会議が開発した温室効果ガス・プロトコルの実証や物流産業としては初となる業界統一的な温室効果ガス排出量の算出手法である欧州規格EN16258の開発にも協力している。ロジスティクス企業、キャリア(船会社、航空会社)、荷主など90社以上の欧州企業が参加して道路輸送での温室効果ガス排出削減を目指すGreen Freight Eurpe(GFE)イニシアチブにも参加している。こうした取り組みを通して物流産業全体の温室効果ガス排出量の正確な把握方法の開発に大きく貢献している。
DPDHLは2008年から環境保護プログラムGoGreenを開始した。2020年までにCO2排出量をグループ全体で2007年比30%削減するための取り組みを行っている。2013年までにすでに16%の削減を行った。グラフ1のとおり事業別に集計して公表している。

(3)CO2算出手法
DPDHLは温室効果ガス議定書、域内排出権制度、温室効果ガス排出量の算出・報告・検証等についてのISO規格であるISO14064に基づき、次の3つに区分してCO2排出量を算出している。
・スコープ1:自家輸送による燃料消費や自社施設からの直接的なCO2排出
・スコープ2:電力などの購買活動に伴う間接的なCO2排出
・スコープ3:協力企業などの活動に伴うその他間接的なCO2排出
自社グループの排出であるスコープ1・2については毎月のエネルギー及び燃料消費データと輸送記録に基づいて社内会計システムにより算出する。直接消費データを入手できないスコープ3については自社データに基づく計算モデルにより算出する。スコープ3のデータ算出に当たってはGFEの成果を活用している。
 温室効果ガス・プロトコルとEN16258により、温室効果ガスの測定対象物質を拡大させるとともに、燃料の精製から廃棄までの燃料サプライチェーン上での温室効果ガス排出量の算出可能範囲を拡大し、燃料の上流工程を含めて同社グループの全温室効果ガス排出量の90%を把握している。
 DPDHLでは2009年度に環境会計システムをグループ全体に導入し、経理部門に統合することで正確なCO2排出量の算出を行っている。

(4)CO2排出量の削減手法
DPDHLはあらゆる輸送モード、施設でCO2排出量削減のための取り組みを行っている。対策はエネルギー消費削減策とクリーンエネルギー使用に区分され、最適化のための技術開発や技術導入を積極的に行っている。
トラックや航空機など輸送機器の更新により、道路輸送や航空機輸送における燃料消費の効率化を図る一方、バイオディーゼルや天然ガスなど環境配慮燃料の使用により炭素排出量を削減している。例えば米国ではダグラスDC?8Sに変えて燃料効率の高いボーイング767Sを導入した。海上輸送ではグリーン・キャリアー・スコアカードに基づいて船会社のCO2排出量等環境面でのパフォーマンスを評価し、環境的側面からの協力船会社管理に活用している。オフィスビルや倉庫等の施設でも再生可能な電力(グリーン電力)、バイオガス、雨水等あらゆるクリーンエネルギーの使用に取り組んでいる。

(5)グリーンサービス
 顧客向けCO2排出量削減サービス(グリーンサービス)には、カーボンニュートラル、カーボンレポート、グリーン最適化の3つがある。
カーボンニュートラルは、主にメールとエキスプレス事業の顧客を対象に、顧客の貨物輸送に伴うCO2排出量と同等の排出権をプロバイダーやDPDHLが支援する京都議定書に基づくプロジェクトより調達してカーボンオフセット(CO2排出量の相殺)を行うサービスである。顧客はカーボンオフセットについての公的な証明書を入手できる。
 カーボンレポートは、顧客がDPDHLの輸送サービス利用で発生したCO2 排出量についての顧客ごとにカスタマイズされた報告書である。フォワーディング事業ではカーボンレポートのオンライン版であるカーボンダッシュボードも提供している。
グリーン最適化では、顧客のサプライチェーン全体での環境に優しい輸送手段を明確化し、CO2排出量を最小化できる最適な輸送手段をアドバイスしている。
 2012年度のグリーンサービス全体での成果は表3のとおりである。排出量計算とカーボンオフセットデータについては世界的な独立認証機関であるSGSによりISO14064 に基づく認証を毎年受けている。




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